小学生中学年、高学年と進んでいって知恵をつけていくと宿題をしない言い訳でこんなことを言い出すかもしれません
”こんなの勉強してなんの役に立つの?”
確かに実生活で鎌倉幕府がいつ始まったのかとか、塩酸と水酸化ナトリウムが反応して塩化ナトリウムと水が生じるって知識を使うことって正直ない気がします
ですが、勉強は脳の筋トレだと考えてみるとどうでしょう
勉強して得た知識自体を目的とするのではなく脳のパワーを育てるために勉強はするんです
脳の回路とは?
脳の回路といってピンとこない方もいるかもしれません
脳のなかでは、シナプスからシナプスに神経伝達物質の受け渡しが行われ、情報伝達が行われています
こうして脳が使われるわけですが、脳のそれぞれの領域ごとに役割がわかれています
- 前頭葉 意思決定、状況判断、情動の制御、運動コントロール
- 頭頂葉 触覚などの感覚情報の処理
- 側頭葉 聴覚機能と長期記憶の保持
- 後頭葉 全般的な視覚機能を担当。したがって、視覚情報を大量に処理する必要がある強化で活発に働く
- 小脳 不随意運動を担当。したがって、身体的なスキルを必要とする体育や音楽で活発
こんなふうに脳の領域ごとに専門分野があり、それぞれの行動によって活性化する脳の領域、神経細胞同士のつながり=回路が使われます
使わない回路は刈り込まれる
神経科学の世界では次のような言葉がよく使われます
”Use it or Lose it”
日本語にすると”使われれば結びつき、使われなければ失う”という意味です
神経細胞は使われれば使われるほど結びつきやすくなりますが、使われないと刈り込み(プルーニング)などが行われます
なぜなら、シナプスを保有しておくのにエネルギーを要し、使われていないシナプスを保持することはエネルギーの無駄遣いになるからです
このエネルギーを少なく済ませたい法則は脳のどの回路を使うか、という選択にも影響します
脳の回路はよく使う回路ほど強く結びついていきます
強い回路で情報を処理する方がエネルギー消費量は少なく済みます
なのでふつうは自分がよく使う強い回路を使った思考に偏ります
英語のことわざに、”If all you have is a hammer, Everything looks like a nail.”ということわざがあります
日本語で言うと”トンカチしかもっていなければ、その人にはすべてが釘のように見える”というような意味です
ねじを締めるのにも、板を切るのにもすべてトンカチで打って解決しようとするなんてばかげてますよね?
でも、学校の勉強でいろんな脳の領域を鍛えておかないといつのまにかそんな状態に陥ってしまうかもしれません
なぜ子供の方が物覚えが早いのか
ここまでで学校で将来使うかもわからない内容の勉強する意義はわかっていただけたと思います
さらに、子供の時に勉強することの意義も理解しておいてもらおうと思います
先ほどいったシナプスの刈りこみは人間が生まれてわずか数か月後から始まります
もっとも遅く発達する前頭前皮質でも、2歳でシナプス数のピークを迎え、刈り込みがスタートします
そこから徐々にシナプスの数は減っていくのですが、それでもまだ子供のうちは十分なシナプスがあります
このシナプスの数が子供と大人の物覚えの早さに関連しています
子供はシナプスを数多く持っていて、その状態をより強固にしようとする”変化”が学習になります
一方大人はシナプスが少なくなってしまった中で神経細胞同士をつなげていく作業も必要になります
つなげてさらに強固にするために二重のエネルギーを要します
そのため、学習は大人になるにつれて時間がかかることがわかっています
というわけで、子供のうちにいろんな脳の領域を使って多くのシナプスを維持しておくことが、将来やりたいことが出てきたときにスムーズにそちらに進んでいけたり、そもそもやりたいことを考えるときのパワーを高いレベルにしておくことにつながっていくと思うのです
まとめ
勉強することはシナプスの数を維持するために必要、シナプスの数がまだ多いこどものうちに勉強しておいた方がエネルギーが少なく済むということが分かってもらえたと思います
もしお子さんが”なんでこれを勉強しないといけないの?”と文句をいってくるようなら、
”うるさい!だまってやれ!とにかくやれ!”
と一蹴しましょう
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